壁は力の拳くらいではびくともしなかった。
それ以上に強固な見えない壁が自分と佑人との間に立ちはだかっているように思えてならなかった。
それが気に入らないからなのか。
とにかく佑人の眼差しを前にすると、自分が狂わされる。
佑人に絡むと自分が何をしでかすかわからない、そんな危うさがいつもあった。
潜在意識の中ではその原因が何なのかわかっていた。
わかっていたが、考えないようにしていた。
それなのにあの野郎!
いとも簡単に曝け出させやがって!
「だからって、今さらどうしろってんだよ!」
とろとろと駅へと歩きながら、力は自分を思い切り罵った。
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