ACT 26
いったい何を考えてるんだ! あいつは!
おかしくなったんじゃないのか!
さっきだって、いきなり現れるし!
佑人はまるで何かに追い立てられるように家へと足早に歩いていた。
あの日、熱を出して寝込んでしまったのは事実だが、風邪や怪我のせいというより、力のせいのような気がした。
力が走り去ると、門に凭れたままずるずるとしゃがみこみ、我に返ったのは雨がひどくなってからだった。
茫然としてどのくらいそうしていたのかはわからないが、力が放り出していった傘を拾い、何とか玄関まで辿り着くと、佑人はずぶ濡れのままバスルームに直行し、湯を張って身体を沈めた。
怪我をした腕を濡らさないようにして風呂から上がり、包帯を取り換えるのに手間取ったものの、スウェットの上下に着替えると、まだ誰も帰ってこないのを幸いに、とりあえず作り置きのグラタンをレンジで温めて食べ、ラッキーにご飯を上げる頃にようやく、その日の出来事が頭の中でフラッシュバックした。
怪我をしたことより何より強烈に記憶を支配していたのは、力の意味不明な行動だ。
一体どういうつもりで、あんなマネをしたのか。
またしても言い争いになり、力をひどく怒らせ、てっきり殴られるとさえ思ったにもかかわらず、思いもよらない行動に出た力のせいで真っ白になった佑人の頭の中は、今ようやくパニック状態だった。
顔が熱いし寒気がするし、熱が上がっている気がした佑人は、宗田医院でもらってきた抗生剤と一緒にビタミン剤をポカリスエットで飲み下すと、少しだけ眠ろうと自分の部屋に上がった。
back next top Novels