心配そうな顔で佑人の後に従って佑人のベッドの脇に座ったラッキーの頭を撫でながら、佑人はいつの間にか眠ってしまった。
傍で人が動く気配がして、はっと目を覚ますと、郁磨が佑人を覗き込んでいた。
「どうした?」
ひんやりした郁磨の手が佑人の額に伸びた。
「ひどい熱だぞ、風邪か?」
その言葉で佑人は全身が熱いのをあらためて感じた。
「ああ……うん、ちょっと濡れちゃって……」
「ん? 何かあった?」
どうせ郁磨には隠しておくことはできないだろうと、佑人は絡まれて怪我をしたことも話した。
「あ、でも問題になるようなことはないから、大丈夫」
「バカ、そんなことはどうだっていい。ちゃんと診てもらったのか?」
郁磨はテーブルの上にある薬の袋を取り上げた。
「うん、宗田医院。今、先生、ぎっくり腰らしくて、息子さんがやってた」
「ああ、俊吾さんか?」
「うん、知ってるの?」
「まあな」
「ごめん、ラッキーの散歩、頼んでいい?」
「わかってるよ、何も心配しないでゆっくり休め」
優しい兄はそう言うと、佑人の額にキスし、ラッキーを連れて部屋を出て行った。
そこまでひどい風邪を引いたのは子供の頃以来のことだ。
翌日になって熱は少し下がったものの、身体はだるいし、体調は最悪で学校に行く気力はなかった。
何せ目が覚めるまで見ていた夢がまたひどかった。
クラスメイトから非難されたり、無視されたりする夢は最近見ていなかったのに、また中学の頃の顔が出てきたのを思い出して辟易した。
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