坂本の言葉に、佑人は自身の保身ばかり気にしている自分が情けなくなった。
怪我をクラスメイトや教師に見咎められたくないと、佑人が考えていることも坂本はわかっていたようだ。
だが、内田も絡んでいるのだから怪我のことが知れて突っ込まれるよりは、やはり悪目立ちはしない方がいいに決まっている。
じゃあ、お大事にと言ってから、閉めかけたドアを坂本はまた開いた。
「あのさ」
「え?」
「本気で俺も、心配したんだぜ?」
坂本は少し険しい眼差しで佑人を見据えると、明日な、と踵を返して帰って行った。
仲間……か。
中学のクラスメイトらとは違うと、もう、わかってはいるのだが。
空は曇りがちだが、雨はまだこぼれていはいなかった。
朝早くから球技大会の練習をしているクラスもあって、校庭はいつもより賑やかだ。
空気は少し肌寒いくらいだからカーディガンを羽織れば包帯も見えないし、欠席の理由は風邪だと言ってあるので変に思う者もいないようだ。
佑人はまた自意識過剰だと思いつつ、そんなことを考えてしまう。
「おう、やっと来たか」
佑人が席に着くと東山が早速机までやってきた。
「お前には大して問題じゃないかもしれないが、三日分のノート、いる?」
「もちろんありがたい、貸してもらえるか」
「一応、コピー取っといた」
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