空は遠く276

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 バサッとコピーの束を差し出されて、佑人は少し面食らう。
「え、すまない、コピー代……」
「いっつも教えてもらってっから、いいって」
 飾らない好意が佑人は嬉しかった。
 坂本といい、東山といい、自分の存在を認めてくれる誰かがいるということに、心の強張りが少しだけ剥がれ落ちる。
「成瀬くん、風邪もう大丈夫なの?」
 内田も気にしてくれたようで、心配顔で声をかけてきたが、「ああ、もう平気」と佑人が言うと微笑んで自分の席に戻る。
 ショートホームルームが始まり、出欠を確認した担任の加藤が教室内を見回して佑人の顔を見て声をかけた。
「おう、成瀬、もう大丈夫か? 風邪は」
「はい」
「ようし、で、代わりに山本が欠席か。あいつが欠席なんざ、前代未聞だな。山本でも風邪引くんだな」
 途端、俄かに笑いが起こる。
「何だよ、それ」
「お前らも気をつけろってこった。この季節、梅雨寒でうっかり風邪なんか引いた日には、灰色どころか地獄の受験生活が待ってるぞ。ま、成瀬はちょっとくらい休んで身体を労わった方がいいけどな」
「だあから、贔屓すんなっての」
 笑いながら生徒側から文句があがる。
「だあから、事実を述べてるだけだ、俺は」
 生徒たちといつもの軽い掛け合いでショートホームルームを終わらせて加藤が教室を出て行くと、サッカーチームの面々が顔を突き合わせた。

 


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