「な、力んとこ、寄ってみないか?」
「え……」
思わぬ申し出である。
「見舞いに行ってやる女もいねぇんじゃ、ちょっと可哀想だし。あいつ、確か一人暮らしだろ? ちょっとようす見に行ってやんね?」
「……でも、俺は……あんまり歓迎されないと思うし」
「ああ? なーに言っちゃって、いっつも仲良く喧嘩してんじゃん」
ひょうひょうとした顔で東山はそんなことを言う。
「あれを、仲良くとは言わないだろ」
「まあまあ、成瀬、何でも気にし過ぎ」
それは言えてる、と佑人は自分でも思う。
力に関することは気にし過ぎ以上のものがある。
「力の部屋、知ってる? あ、手ぶらもなんだし、何か見舞い持ってった方がいいか」
あれよあれよという間に、東山につられて電車をいつも降りる駅より一つ先で降りる。
駅でいえばそうなるが、実際歩いても地理的には佑人の家から二十分ほどの距離だろう。
一度来たことがあるはずなのだが、あの時佑人は酔っていたし、ラッキーのことでパニクっていたから、ほとんど覚えてはいない。
二人は駅を降りてすぐのスーパーに入ると、栄養補助ゼリーや栄養ドリンク、イチゴやキウイ、ヨーグルトなどをカゴに入れた。
「パックのご飯とか、カップうどんとかも食べやすいか」
東山は色々考えながらたったかカゴに放り込む。
「っと、風邪の時はやっぱ梅干しな」
おにぎりやサンドイッチなども最後につけ加えると結構な量になった。
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