空は遠く280

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「んじゃ、割り勘な」
 清算をした佑人に、東山はきっちり半分の金額を差し出した。
「そういえば、坂本って」
 どーんと大きなメロンを持って見舞いにやってきた坂本のことを佑人が話すと、東山は声を上げて笑った。
「あいつってさ、も、てーんで、そうゆーとこ、お坊ちゃまだからな、食事とかほとんど作ったことないんじゃね? 遊びでバーベキューとか以外」
「そうかも。東山は妹さんと交代で食事作ってるんだっけ?」
「東でいいって。まあ、もうガキの頃からだからそれが普通って思ってるけどな。オヤジが死んでからおふくろ夜勤とか多くなったし」
 どうということもないように東山は言った。
「とか言って、中坊ん頃はちょっとばかし、粋がってたことあってさ、南澤入ってすぐん時、昔やりあったやつらと大喧嘩して停学くらった上に怪我しておふくろのいる病院行ったんだ。そん時、おふくろが毅然と仕事してるとこ見て、何かこう目が覚めたっつーか」
 佑人は東山の家を訪れた時に出会った東山の母親のことを思い出した。
「カッコいいおふくろさんだな」
「ハハ、ありがとよ。成瀬ンとこは、おふくろさん、女優とかだとやっぱ、料理とかやんねぇの?」
「そうでもないんだけどね、料理は好きでたまに作ってくれたりするし。でも、しょっちゅういないし、結局俺と兄どちらかが作るか、みんな遅かったりすると俺一人だけだから、適当になる」
 そんなことを話しながら、五分ほど歩いたろうか。
「あ、ヴィラ高井戸ってここの、三階」
 住宅地に建つ三階建ての瀟洒なマンションだ。
 ドアの前でチャイムを押すが、返事がない。
「おーい、力ぁ!」
 呼んでみたがウンともスンとも言わない。

 


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