空は遠く283

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 拳を握る東山を、力がイライラと斜に見た。
「東がテニスクラブ、は、似合わね!」
「フン、羨ましがってろ」
「誰がだ!」
 テレビの横にある置時計の文字が六時ちょうどになると、東山は立ち上がった。
「そろそろ俺帰るわ。今日、うちでもメシ作んなきゃだから、成瀬、あと、頼むな」
「え………」
 そんな展開は予測していなかった。
 一緒に帰ると言いたいところだったが、病人の部屋で食べ散らしたまま片付けもせずに帰るわけにはいかない。
「じゃ、俺、片付けるよ」
 東山が帰ってしまうと、そのまま力と二人気まずい沈黙のままはいられず、そそくさと立ち上がり、佑人は食器をキッチンに運ぶ。
「何か飲むか? お茶とか」
 一応聞いてみる。
「お茶」
 ぶっきらぼうな答えが返ってくる。
 佑人は湯沸しポットに水を入れてセットし、食器やフライパンを洗う。
 その間に力はベッドに戻って横になった。
 ちらと見やるとそのようすはやはり具合が悪そうだった。
 佑人は水切りにあったマグカップにティーバックでお茶を入れると、水を入れたグラスと一緒にベッドの脇のテーブルの上に置いた。
「わりぃ…」
 そんな気弱そうな物言いは本当にまるで力ではないみたいだと、佑人は力を見つめた。

 


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