空は遠く284

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「熱があるのなら、明日も大事を取った方がいい。それじゃ、俺も……」
 力が薬を飲み下すのを見届け、帰る、と言いかけた佑人だが、力に腕を掴まれてよろけ、そのままベッドに倒れ込んだ。
「お前さ、俺の言ったこと、冗談だと思ってるだろ」
 身体を起こした力に今度は上から押さえつけられて、まともに顔を突き合わせる。
「え…………」
 すぐ目の前で危うい色を湛えた力の眼差しに覗き込んでくるのに恐れさえ感じて、佑人は身体をこわばらせた。
「だいたい、誰が好きでもないやつのために駆けつけて身体張ったりするかよ」
 それはこれまで佑人が耳にしたことがない外国語のように聞こえた。
「事あるごとにひとりで突っ走りやがって、東條のザコやら上谷のバカやらに自分からエサになりにいくとか、昔っからドンくせぇばっかなんだよ、てめぇは!」
「そんなこと、お前に言われる筋合い……」
「どんだけヤキモキしたと思ってんだ! バーカ!」
 思わず言い返そうとした佑人の言葉は、力の怒鳴り声に遮られ、佑人は息を呑む。
 それって………
 力の言っていることをそのまま受け取れば、まるでそれは佑人を好きだと言っているかのようだと、佑人は漠然と思う。
 力の腕が佑人をベッドに押しつけ、その身体の重みを感じた時、佑人の中を溢れんほどの思いが支配した。
 だが唇が触れんばかりに近づいた刹那、力は顔を上げ、「くっそ!」と喚く。
「ったくざまあねぇな、風邪なんかで。ここでお前を襲ってまたお前に移したりしたら、宗田のヤツにこきおろされっからな」
 吐き捨てるように言うと、力は佑人の手首を掴んだまま仰向けになった。

 


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