いや、俺の中に、あいつを好きだって思いがあるから、告られたみたいに聞こえたのかもしれないし。
からかってみただけっての方が有りうるよな。
……俺の気持ち気づかれて、面白がってとかだったら嫌だな。
力を好きだという気持ちを佑人は否定するつもりもないし、そのことで後ろめたいということもない。
例えばそれを太陽の周りを地球が回っているのだということと同じくらい認めることはできる。
けれどもそれは一方的な佑人の思いで、口にするべきことではないと思っているし、そのことで人から揶揄されたり、ましてや本人から軽蔑されたりしたら目も当てられない。
中学の時、嫌というほど人間の持つ棘に引っかかれたというのに。
何だか嫌な予感が朝からあった。
高校に入ってからせっかく静かに安寧に過ごしてこられたのに、近づきすぎたのかもしれない。やっぱり力のことは遠くから見ている方が無難だ。
人を傷つけるのも嫌だし、傷つけられるのもごめんだ。
当の力は少し声が掠れているようだが、すっかり元気そうだ。
佑人はサッカーチームの面々に囲まれている力の声だけに耳を澄ませた。
でも、何て言って返せばいい? この鍵。
逡巡しながら、佑人はポケットの中の鍵を握りしめた。
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