空は遠く293

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「いたいた、成瀬、こんなとこで、何やってんだ?」
 突然、後ろから声をかけられて、佑人は涙を拭って振り返る。
「坂本……」
「え……ど…うしたんだ? 何があった?」
 また溢れてしまった涙を隠すことができなかった佑人を見て、坂本はおろおろと声をかける。
「あっ、やっぱり、力のやつに何か言われたのか? さっき、あのやろ、成瀬のこと追っかけてって、戻ってきた時何かイラついてたし」
 どうやらそれで佑人のことを心配して来てくれたのだろう。
「……違う……あの、ボストンの友達から連絡あって、愛犬が亡くなったって……」
 咄嗟に思いついた出まかせを口にした。
「……あ、あの、ラッキーの兄弟で……」
「………そっか……、そりゃ、可哀想なことしたな。まあ、その分、ラッキーのこと大事にしてやればいいさ」
 佑人の肩をポンポンと叩いてから、坂本は窓から外を覗いた。
「へえ、図書館にこんな場所あったんだ。こんな専門書に用があるやつ、滅多にいないもんな。この学校、図書館だけは妙に充実してるけどさ、誰がこんな本、入れたんだろ」
「さあ、昔の先生とか、かな」
 佑人は坂本にウソをついてしまったことが少し後ろめたかったが、本当のことが言えるわけでもない。
「成瀬……」
「え?」
 坂本のお蔭で涙は止まったようだ。
「……何かあったらさ、一人で抱え込まねぇで、俺に言えよ? こんなとこで一人で、中学ん時のトラウマとかあるかも知んないし、そりゃま、一人になりたい時ってのは誰もあるとは思うけどさ」

 


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