「まあ、俺ってネガティブなやつだし、捻くれてるし」
「それを言うなら、俺なんか、チョーネガティブ」
長身の坂本が佑人を覗き込むように小首を傾げる。
「どこがだよ」
「成瀬くんはほんとは俺なんかと口聞きたくないんじゃないかとか、成瀬くんは無理やりカテキョなんか頼み込んでほんとは迷惑してるんじゃないかとか、成瀬くんは……」
真面目な顔をしてそんなことを言い続ける坂本を佑人は笑った。
「何だよ、それ。人の都合も聞かないで、ゴリ押しで家庭教師頼み込むとか、全然ネガティブとはかけ離れてると思うけど」
「そっかぁ?」
坂本はにっこりと笑う。
「そういや、球技大会、テニスやるんだって? 俺もテニスにすればよかった」
予冷が鳴ったので、図書館を出ると、坂本がそんなことを言い出した。
「何言ってるんだよ、坂本がバスケやらないで誰がやるんだよ」
「俺の勇姿、見に来いよ。成瀬の前でダンク見せるから」
坂本はジャンプしてみせる。
「だったら、行かない」
「何でだよ?」
「敵のクラスに塩を送ることになるし」
ちぇ、と眉を顰めながらも「とにかく、見に来いよ」とまた念を押す坂本とは文系の教室のある三階まできて別れた。
階段を上がっていく佑人を、坂本がじっと見つめていたことは気づかなかった。
授業が終わると、東山が佑人の席までやってきた。
「ああ、さっきメール来て、明日の午後、兄が連れて行ってくれるって。都合は大丈夫?」
郁磨が入っているテニスクラブで約束していたテニスの練習ができることになったのだ。
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