ACT 28
今日もみんな帰りは遅いことはわかっていたので、佑人は一人夕食の準備を始めた。
郁磨が出かける前に作ってくれていた炒めご飯とサラダを冷蔵庫から取り出すと、熱くなったフライパンに溶き卵を流し込んだ。
レンジで温めた炒めご飯を卵でくるめば、オムライスの出来上がりである。
作ったものをレンジで温めるより、その方が卵が美味しいし、郁磨の炒めご飯はそれだけでも自分が作るよりはるかに美味しいのだ。
料理はうまいし、東山の言葉を借りれば強くて、優しくて、弟から見てもイケメンで、頭はキレるという文句なしの兄だが、そういえば最近、彼女を連れて来て紹介したりしていないから、おそらく誰ともつき合っていないのだろう。
難を言えば、父親譲りで研究バカである。
研究に没頭していて、うっかりデートの約束を忘れたりというのが原因で振られたことが何度あったか。
何となく佑人が中学で問題を起こしてから、彼女がいないのではというのは考え過ぎだろうか。
佑人のことを心配してくれているのはよくわかるのだが、もしや自分のことが郁磨の足枷になっていたりしないだろうか。
時々不安になるのはそんなことだ。
優しい家族の疫病神にだけはなりたくないと思っているのだが。
またネガティブな考えにとらわれながら食事を終えて、ラッキーの散歩に出てからしばらく歩いた頃、携帯が鳴った。
「坂本? 何か、あった?」
坂本からで、リリィにいるから、今から来られないかと言う。
「……いいけど、ラッキーの散歩が終わったら行くよ」
大事な話がある、と珍しく真面目な声だったので、断り切れなかった。
本当は、力とのことがあったので、あまり足を向けたくない場所だ。
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