自分が好きなのは力だなどとは口が裂けても言えない。
でも、と佑人の中で別の声がした。
このままいがみ合うだけの力をただ見ていても、前に進めないだろう、と。
どうせ高校を卒業したら、力との縁も切れるのだ。
坂本はおそらく自分よりは大人で、一緒にいると穏やかで楽しい毎日を過ごせるのではないか。
昔の自分から抜け出すこともできるのではないか。
それはしかし、坂本の気持ちを無視した、利己的な考えだ。
「答えは急がない。いい答えだと嬉しいが。ああ、でも、その前に、俺はどっちでもOKなんだけど、成瀬、男はバツってんだったら、今、そう言ってくれ」
「いや……バツじゃないけど」
「けど?」
「……坂本は友人だと思ってるし」
「心配しなくても、どんな答えでも、俺は友達をやめる気はないから。まあ、ケーキでも食べなよ」
「……ああ」
ケーキはこの店で最高に美味しいと評判のトルテだったが、口に運んでも考え込んでしまった佑人にあまり味はわからなかった。
静かな夜の時間が流れた。
バンッといきなりドアが開かれるまでは。
「おい、何でCLOSEDなんだよ。こいつら、いるのによ」
店に入ってくるなり騒々しく文句を言ったのは、タローを伴った力だった。
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