空は遠く301

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 ジロリと奥の二人を睨みつけてから、力は坂本の隣にどっかと腰をおろし、タローがすぐ傍らに来て大人しくうずくまると、「コーヒーくれ。それとこいつに水!」と横柄に言った。
「で? 何の用だって? 坂本」
 力が坂本に声をかけると、佑人は立ち上がった。
「じゃ、俺、帰るよ」
 佑人はそそくさと力の前を通り過ぎ、練に「ごちそうさまでした」と声をかけて店を出た。
 力は佑人を見ようともしなかったし、佑人の方も力の顔すら見ることはできなかった。
「何やってたんだ、二人で。また、英語のお勉強か?」
 イライラと力が尋ねた。
「昼に、あいつ、泣いてたんだ」
 力は坂本を振り返る。
「俺はまた、お前があいつ追ってって何か悪さでもしたんじゃねぇかって、心配して図書館へ探しに行ったんだ。まあ、あいつはボストンのダチの犬が死んだって連絡が来たからだって、言ってたけど」
「は、何だよ、それ……」
「成瀬の涙なんて、凶悪だよな。俺、一発でこう、胸、ズキューンってやられた感じで、今さっき告ったとこだ」
 それを聞くと、力はガタンとテーブルをひっくり返しそうな勢いで立ち上がる。
「てめぇ、…ざけてんじゃねぇぞ!」
「練さんが証人。わざわざ貸切にしてもらって、ふざけてなんかいられっかよ」
 コーヒーをテーブルへ、タロー用の皿をタローの前に置いて水をたっぷり注ぐと、練は「テーブル、壊すなよ」と力を睨みつける。
「お前が入ってきたせいで、成瀬、帰っちまったから、返事は保留だけどな。でも可愛いとこあるよな。ワンコのことで泣くなんてさ。ああ、でもボストンのワンコって、ラッキーの兄弟とかって言ってたな」

 


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