空は遠く302

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 ベラベラと捲し立てる坂本の話を苦々しい顔で聞いていた力は、「何だと?」と聞き返す。
「ああ?」
「ボストンの犬が何だって?」
「だから、ラッキーの兄弟なんだってよ」
「あのやろ! ざけやがって! いいか、あいつんとこの犬はガキん時、俺がやったこいつの兄弟だ! ボストンなんかにいるわけねぇだろ!」
 吠えるように言ったかと思うと、力は店を飛び出した。
 夕方頃から空気がじめついて重くなっていたが、ポツリポツリと雨が零れ始めていた。
 駅の向こう側へは、回り道をするより駅構内を抜ける方が早いだろうと、力は階段を駆け上がり、反対側の出口へとまた階段を駆け下りる。
 佑人の姿を道路を渡った外灯の下に見つけたが、信号が赤になり、車が一斉に動き始める。
 イライラと車の途切れるのを待っていた力は、まだ信号が変わらないうちに道路を渡り、石塀が続く道で佑人に追いついた。
「内田じゃなくて、あいつが好きなのかよ!」
 雨が降ってきたので少し足を速めていた佑人は、突然背中に浴びせられた言葉に振り返った。
「え……」
 またしても突拍子もない力の出現に佑人は面食らう。
「俺のことは適当にあしらっといて、坂本には応えてやろうってわけか」
「何、言って……」
 佑人はわざわざ自分を追いかけてきてまで力がまた辛辣なことを言うのかとムッとする。

 


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