空は遠く303

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「適当なこと言って引っかけようとしたのはお前じゃないか」
「てめぇが鍵、勝手に返しやがるからだろうが! 持ってったくせに!」
 そんな切り返しを予期していなかった佑人は言葉に詰まる。
 雨が目に見えて辺りを湿らせていく。
「俺のこと嫌ってんなら、何で持ってったんだよ!」
「嫌ってるのはお前だろ。俺のこといつだって失せろとか思ってるんだ」
 つい声高になる。
 近くに人影はなく、車がひっきりなしに行き来するだけだ。
 力は少しだけ口を噤んだがすぐにまた言った。
「……んなこと思ってるわけねぇだろ。啓太なんかバカ正直で、すぐに何でも信じちまうようなバカに、腹黒いことなんか考えられるわけねーんだ」
「高田のことは悪かったと思ってるよ」
「啓太のことだけじゃねぇ、お前が周りにバリヤ張りまくって、いつもお前が人のこと信用しねぇでいるからだろ! それが見てっとイラつくんだよ!」
「そんなこと山本に関係ないだろ!」
 途端、佑人の身体は烈しく石塀に押しつけられた。
「ったく、ウゼぇやつだな。てめぇ、俺の言ったこと聞いてなかったのかよ?」
 すぐ間近にある力の射るような眼差しから佑人は逸らすことができなかった。
「俺は、好きでもねぇやつに俺から触れたりしねぇんだ…………」
 ドクンドクンと佑人の心臓が大きく音をたてる。
「え………」

 


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