空は遠く31

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  ACT  6
 
 母親の手作りケーキと、紅茶の芳しい香り、真奈の部屋は目いっぱい両親に愛されて育った証がそこここに溢れるような、明るい女の子らしい部屋だった。
『やだもう、ママってば、渡辺くんのこと娘のあたしよりきれいだって騒いでるの、失礼しちゃうと思わない?』
『俺はがっくりだなー、強そうとか、頼もしそうとか言われたほうが嬉しいのに』
 ころころ笑う少女は本当に可愛くて、佑人は好きだったし、大切にしたいと思っていた。
 中学一年の秋の終わり、真奈に告白されてつき合い始めた頃は、クラス中でひやかされたけれど、やがて公認のカップルのように扱われるようになり、日本に戻ってきて以来、少しばかり引っ込み思案になっていた佑人に、自信と行動力が伴い始めた。
 佑人が入った私立の中学は、難関な試験を突破して入ってきたお行儀のよい、裕福な家の子供が多く、さほど素行の悪い生徒もいなかった。
 佑人は学業でもスポーツでも優等生として一目置かれるようになり、クラス委員にも選ばれ、教師たちの信頼も得て、ようやくボストンの友達へのメールにも本当のことを書けるようになった。
 三年にあがっても中高一貫教育だったため、そのまま何もなければ問題なく進学できるはずだった。
『日曜日に映画を見ない? それから欲しい物があるから渋谷につきあってほしいの』
 少女は、いつのまにか女らしさを備えた美少女へと変わっていた。
 制服を脱いで、少しばかり背伸びした二人は、センター街を抜けたところにあるアクセサリーショップへ向かった。
『少し早いけど、バーステイプレゼントに買ってあげるよ』
『ほんと? 嬉しい!』

 


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