空は遠く33

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 名前を聞かれ、答えたものの、周囲の人間が、佑人が男たちから少女を救ったのだと証言してくれなければ、佑人はもっとまずい立場になっていたかもしれない。
 しかし、別の意味でまずいことになったのは、佑人の家族が駆けつけてからのことだ。
 現れた両親と兄に警官から事情が説明されているうちにも、とるものとりあえずノーメイクでやってきた佑人の母を見た野次馬たちの間から、『渡辺美月じゃない?』『え、渡辺美月の息子?』といった声が聞かれた。
 たちまちマスコミがそれをかぎつけ、『渡辺美月の息子が暴力沙汰で捕まった』と、たまたまその頃話題に乏しかったせいもあってか、一斉にワイドショーが取り上げた。
『私の息子はわけもなく人様に暴力を振るうようなことはありません。私は息子を信じています』
 しかも記者会見の席でと毅然としてそう言い放ったことで、美月はかえってバッシングをうけることになってしまったのだ。
 美人で明るい大女優として人気のあった美月に対して、甘やかしすぎた子供からしっぺ返しされたとやら、有能な女優も子育ては無能だとやら言いたい放題、果てはありもしない家庭内暴力まででっちあげられた。
 佑人は学校から謹慎を言い渡され、マスコミ攻勢がひどくて一家はしばらくの間、外に出ることさえ躊躇われたのだが。
『子供の気持ちも考えないで、だから嫌いだってのよ、マスコミってやつは!』
『ったくだ! みっちゃんはりっぱだった!』
『かずちゃん、惚れ直した?』
『あたぼうよ!』
 当面のスケジュールが空白になり、美月のマネージャーがオロオロする前で、江戸っ子の二人はラブラブなやりとりを繰り広げている。
『お前は悪くない。よってたかって女の子をいじめるなんざ、絶対許せない輩だ。俺だってやっぱり同じことをした』
 佑人の傍らでは兄の郁磨が拳を握る。

 


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