空は遠く34

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 一見柔そうな美青年に見えるその外見にだまされてはいけない。
『佑人は昔からまっすぐだからなあ。でもさ、俺ら空手の有段者なんだから、人よりちょっと強いんだよ。正攻法でいってしまうと、相手に与えるダメージが大きくなる。次はそこんとこ考えないと』
『次なんかなくていいよ』
 佑人は笑った。
 端から見たらこんな時になんて能天気なと思われるかもしれないが、これがいつもの佑人の家族だ。
 ここに空手道場を開いている一馬の父一太郎や小料理屋の女将をやっている美月の母、峰子までがやってきて、大騒ぎだったのだ。
 こんな家族が佑人は好きだ。温かくて情に厚く、そして常にポジティブ。
 けれどそんな中で少しばかり考え込んでしまう佑人はいつも遅れをとっているように感じていた。
 きっと郁磨なら、もう少しうまく立ち回れたのかもしれない。
 明るく元気づけてくれるそんな大切な家族に結果的に迷惑をかけることになってしまったことに、佑人は心を痛めていた。
 もうひとつの気がかりは真奈のことだった。
 あの後、一言も言葉を交わせないままで、真奈がひどく傷ついているのではないかと。
 携帯に電話をしてみたが、電源が入っていないらしい。
 メールにも既読がつかない。
 意を決して真奈の家に電話を入れてみたが、何か言う前にガチャリと受話器が置かれた。
 佑人は不安になった。
 ひょっとしてこんな風に騒がれたことで、真奈の家にも迷惑がかかったのではないかと。
 謹慎があけるのを待ちわびた佑人は、教室に入るなり真奈を探した。
 だが真奈はまだ登校しておらず、現れたのは二時限も終わった頃だった。
『和泉、心配していたんだ、もしかして君の家にも迷惑がかかったんじゃないかって』
 真奈はしかし目を合わせようとはせず、弱々しい笑みを浮かべただけだった。

 


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