クラスの何かが違っていた。
佑人と目を合わせようとしないのは、真奈だけではなかった。
声をかけようとしてもさり気なくかわされる。
遠巻きに佑人をチラチラ見ながら、ひそひそと話しているのにも気づいていた。
クラスの誰もが、佑人を無視しているのがわかった。
何故なのかわからなかった。
佑人はもどかしさに唇を噛んだ。
徐々に佑人に対するあからさまな行為が悪意を帯びてくる。
提出物や課題のプリントも佑人だけに渡されず、教師に何度か注意を受けた。
忘れました、すみません、できていません、佑人がそう答えるたびに、どこかでくすくす笑いが漏れてくる。
以前は優等生の佑人を特別扱いしていた担任や教師らも、佑人の状況に気がついていないのか、或いは事件のせいで佑人への期待も失せたのか、そんな佑人を心配してくるようなことさえなかった。
どころか、生徒同様あからさまに佑人に関わりあわないようにしている教師すらいた。
真奈もまた、声をかけようとする佑人をやはり無視した。
まるで佑人から庇うかのように、数人の女子にいつも囲まれていた。
『佑人が心配してるみたいだから、電話してみたのよ、そしたらさ、頭きちゃうわ、あの和泉って子の母親!』
偶然聞いてしまったのは数日前のこと。
『佑人が勝手に喧嘩して、娘を巻き込んで、ですって』
『親は往々にして子供をかばうもんじゃないか?』
暢気そうな一馬の声に、美月がまた言い返す。
『真奈って子が言ったんですってよ、佑人が強引に渋谷に連れ出したって』
『そいつはないだろ? 彼女の誕生日に映画をせがまれたみたいじゃないか、佑人が』
『そうよ。あの子が嘘を言ってるのよ。佑人には言わないでおくけど、このままじゃ気が治まらないわ』
『美月、事を荒立てると佑人が傷つくよ』
『ええ、それはわかってるわ』
真夜中、眠っているだろう佑人が聞いているとは思わなかったのだろう。
back next top Novels