家族にこれ以上心配をかけたくないと考えた佑人は、学校でのことは何も話さなかった。
もし話したら、美月のことだ、今度は学校にさえ乗り込みかねない。
ただ、なぜ、自分がそんな仕打ちをうけなければならないのか、わからなかった。
さらに偶然、女子がトイレで噂しているのを聞いてしまった。
『渡辺、最近チョーウザウザ、ってこれナオでしょ』
『あんな美形捕まえて、ウザはないよ、ウザは』
『だーって、暗いしぃ、何か物言いたそうにじっとこっち見てるしぃ、ウッザーって感じじゃん』
『それよか、これ! ません、ません、ません、ざまぁネーし、って、うちのクラスだよ』
声高に噂し合っている内容から、佑人はもしやと思う。
携帯で探っていくと、案の定、思ったとおりのサイトにぶつかった。
ワタナベ、メッキはがれた?、優等生ブザマ~、センセにコビってる、ツラ暗~い、マジ、ムカつく! ウッザくね? いい子ぶってさー、シネば? 消えればいいのに――――
女優の息子とかっていい気になってるなよ、教師も見放したみたい、家庭内暴力すごいらしいよ、などと根も葉もないとはこのことだろう、目にするごとに佑人の心は冷えていく。
裏サイトの中傷や嫌がらせで登校拒否になった生徒がいるとは聞いたことがある。
自分への中傷はさほど大したものではないのかもしれない。
ただ、佑人を憤らせたのは、母親への中傷だ。
お金さえ与えとけばいいと思っているバカな母親、息子のことを溺愛してまともな教育もできない母親失格だ、子供の書き込みとは思われないものまであった。
言いようのない怒りで爪が食い込むほど拳を握り締める。
ひどく悔しかった。
叫び出したかった。
いつものように午前零時を過ぎた頃、ラッキーを連れて散歩に出かけると、雲が流れて星たちが散りばめられた夜空が悠然と佑人たちを見下ろしていた。
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