誰かと協力してやらなければならないようなことは、一切やらなかった。
『皆が俺とはやりたがらないみたいなんで』
教師が注意すると、佑人は平然と答え、平然と教室を出た。
やがて期末試験が終わり、一学期は夏休みを待つばかりとなった頃、張り出された結果の一番には、満点に一点足りないだけという渡辺佑人の名前があった。
教師たちに別の意味で佑人が一目おかれるようになっていた中でのこの佑人の成績は、彼らにも少しばかり論争を巻き起こしたようだった。
もう、終わったな。
担任がごちゃごちゃ言っていたが、佑人は別のことを考えていた。
三年になって担任となった英語教師に、佑人は最初から違和感を覚えていた。
生徒への対し方が極端で、妙に佑人を誉めそやすこの担任が嫌いだった。
事件の後、佑人に対する対応が手のひらを返したように変わった。
何となくだが、裏サイトの母親への中傷のひとつはこの担任が書いたものではないかという気がしていた。
窓の外のポプラ並木が青々と風に揺れていた。
その向こうに見える空は高く、遠い。
『渡辺、何をしている』
ここしばらく、佑人が何をしていようが注意をするような教師はいなかったので、佑人はようやく、教壇に目を向けた。
ALTと一緒の一学期最後のコミュニケーション授業の途中だった。
担任がまだ何か言っていたが、佑人は不意に立ち上がる。
一瞬、担任が驚いてあとずさる。
それから何を話したのか、佑人はあまり覚えてはいない。
ただ、唇から迸るように出てきたのは滑らかな英語だった。
誰かを集中攻撃する裏サイトを知っているか? どうやらその中に加わって誹謗中傷している教師もいるらしい、ハンドルネームを使っていても、データから発信履歴を追跡することも可能なのにあまり利口じゃないやり方だ。
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