空は遠く41

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   ACT  7
 
 駅の所在地は杉並区だが商店街を抜け住宅地を少し歩いて十分ほどで世田谷区に入る。
 閑静な住宅街の並びにうっそうとした林が見えてきた。
 その林を取り囲む生垣がしばらく続くと、武家屋敷のような古びた門が現れる。
「ほんとにこのあたりかよ? 力」
「ああ」
 十二月に入り、日が落ちるのが速くなった。
 五時を過ぎるともうあたりは暗くなり、街路灯がともり始める。
 この近辺は人通りも少ないようで、よけいに垣の向こうのうっそうとした木々の群れが不気味さを漂わせている。
「けど、ここって人、住んでんの?」
「…ったりめぇだろ、よく見ろ、木とか、ちゃんと手入れしてあるだろーが」
「そっかぁ…けど、これどこまで続く……わ…!」
 力が驚いた顔の啓太の視線の先を見ると、藍色の作務衣を着た老人が、先にある古い門から出てきたところだった。
「あ、あの人に聞いてみよ」
 だが、老人とはいえ、見るからに頑健そうな身体つきや険し気な眼光に、啓太は思わずびびって足が止まる。
 それでも意を決して、啓太はその老人に尋ねた。
「あのー、すみません、成瀬さんのうちってわかりますか?」
「ああ、みんな、よく迷うんだよ、この先を少し行くと、古木戸があるから、そこを開けるとすぐ見えるよ」
 破顔すると、雰囲気は人の好さそうな好々爺に変わり、親切にそう教えてくれた。
「ありがとうございました」
 啓太が礼をいうと、老人はうんうんと頷くようにして二人が来た方へと歩いて行った。
「何か忍者屋敷みたいなとこだと思ってたけど、あのじーさん、まさしくって感じだぜ」
 啓太が老人を振り返りながら、抱えていた鞄を持ち直した。
「ここだな」
 確かに古い木戸、ドアが現れた。

 


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