「やっぱり、忍者屋敷だ。このドア開けると何か出てきそう」
「フン…」
思い切りバカにした笑いに、こわごわドアに近寄った啓太は力をちょっと睨む。
「ち、力、開けてくれよ」
「しょーがねぇな」
力がドアを開けると、啓太は自分が力についてきてもらったにもかかわらず、すっかり力に任せ切って、力の背中に張り付くようにして恐る恐る後に続く。
確かに家の明かりが見えるには見えるが、やはりうっそうと続く木々の間の小道を軽く二十メートルは歩いた。
明るい照明が忍者屋敷のイメージを払拭し、やがてそこに現れたのはアメリカンな邸宅だった。
落ち着いたベージュの壁と白い窓枠、芝が植えられた家の周りを、やはりクリスマスカードにでも出てきそうな白いフェンスが囲んでいる。
力はフェンスを開けて数段の階段を上がり、玄関のチャイムを押した。
「おい、ここからはお前だけで行け。俺は帰る」
「え、何でだよ、俺一人じゃいやだよ」
「お前が行きたいってから、ついてきてやったんだろ」
啓太はしっかりとUターンしようとする力の腕にしがみついている。
「おい……」
啓太を置いて帰るつもりだった力だが、すぐにドアが開いた。
「あら、いらっしゃい、佑くんのお友達?」
長い髪をまとめてアップにし、にっこり笑うメガネ美人に、二人とも一瞬戸惑う。
「どうぞどうぞ、遠慮しないで入って」
「あ、すみません、あの……」
啓太が躊躇いがちに言いかけると、メガネ美人は「靴はそのままでいいの、気にしないで」と言う。
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