空は遠く43

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「割と長いこと向こうに住んでたもんだから、かずちゃんがねぇ、すっかりかぶれちゃって、こんなの建てちゃったのよ。正真正銘ちゃきちゃきの江戸っ子なのにねぇ。まあ、でもあっちからのお客様も多いし、いいんだけど。どうぞどうぞ、その辺に座ってて」
 黒のセータにカーディガンを羽織り、膝丈のタイトスカートを履いている抜群のプロポーションのメガネ美人も、ヒールのあるミュールのまま、軽快な口調でそう説明しながら二人をリビングに通すと、手に持っていた携帯で電話をかけ始めた。
「あ、お客さんなの、うん、大丈夫。で、明日のことなんだけど……」
 中は外の寒さとはうってかわって暖かい。
 吹き抜けになっているリビングの真ん中には、大きな暖炉があり、その前に敷かれた厚ぼったいじゅうたんには、座り心地のよさそうなソファセットが置かれている。
 メガネ美人は、携帯で話しながらどこかに消えた。
「すっげ、美人だ、メガネしてっけど、成瀬の姉ちゃんかなぁ」
 まだ顔を赤くしたままソファに腰を下ろし、啓太がつぶやく。
「バーカ、おふくろだろ」
「うっそ、姉ちゃんだろ? 何か、どっかで見たような気がするけど」
「成瀬に似てるんだよ」
 帰ると言っていた力は、ソファにでんと腰を下ろして言った。
「そっか」
「どうでもいいが、とっとと用を済ませたら帰るぞ」
「いいとこきたわね、あなたたち、ご近所の豆大福、美味しいんだから」
 力が面白くもなさそうな顔で啓太にそう言い放ってすぐ、メガネ美人が、お茶のセット一式と豆大福がどっさり並んだ皿を乗せたトレーを持って戻ってきた。
「あの、どうぞおかまいなく」
 啓太はすっかりしゃっちょこばっている。


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