空は遠く44

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「男の子は遠慮なんかしないのよ。そういえば、肝心の佑くんはどこかしら」
 テーブルでお茶を注ぎながら、メガネ美人はようやく気がついたように言った。
「あっ、そう、それ、あのっ、実は成瀬、今朝具合悪かったみたいで帰っちゃったんで、鞄、届けにきたんです」
 啓太が手に持ったリュックを見せる。
「あらま、ほんと? どうしちゃったのかしら、佑くん、滅多に学校休むなんてないのに。ちょっとくらいの風邪なら無理してでも行っちゃう子だから。じゃ、部屋にいるのかな」
 メガネ美人はちょっと首を傾げて、上を見上げる。
「わざわざありがとう。でも、鞄忘れるなんて、らしくないわねぇ。さ、どうぞどうぞ、召し上がれ。じゃあ、佑くん、呼んでくるわね」
 そう言ってメガネ美人が立ち上がると同時に、テーブルの上で彼女の携帯が鳴った。
「あら、ちょっと、ごめんなさい」
 メガネ美人は携帯を取って話し始めたが、「ねえ、あなたたち、悪いけど、佑くん、呼んできてくれない? 上がって奥の突き当たりの部屋」と上を指さし、二人から離れたところで話を続けている。
 力と啓太は顔を見合わせた。
 その時、階段を駆け下りてきた大きな影があった。
「わっ、わ、わ、な、何だよこれ!」
 テーブルに駆け寄ってきた大型犬に、齧りかけた大福を持ったまま、啓太は後ずさって体を硬直させる。
「犬だろ」
 力が顔や体を撫でてやると、犬は満足そうに力に身体を委ねている。
「で…でけぇ……って、力、犬、慣れてる」
「俺んちにもいるんだよ、犬」
 ゆっさゆっさと尻尾を振りながら、犬はいつの間にか力と和んでいた。

 


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