空は遠く51

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 啓太にしてもだが、坂本がわざわざ俺の鞄を持ってくるなんて、一体どういう魂胆だ?
「いつもお前におごってもらったり世話になってるからって高田くんが言ってた。仲いいの?」
「仲いいって、ガキじゃないんだから。ごく普通に帰りマック行ったりしてるだけだよ」
「にしても、珍しいな、鞄置いて帰ってきちゃうなんて。みっちゃんも心配しててさ」
「熱あって、忘れただけだよ。みっちゃん、帰ってたの?」
「割と時間あいたからって食事作ったりしてたんだけど、その後ロケ行った」
「今度、北海道だっけ? 超寒いよね、今頃」
 郁磨はまだ何か聞きたそうな顔をしていたが、佑人は「ラッキー、散歩行ってくる」と出て行こうとした。
「バーカ、俺が行く。熱があるんだろ? まだ、目が潤んでるぞ。いいから、お前は寝ろ」
「……じゃあ、お願い……」
 郁磨はすっと腕を伸ばして佑人を引き寄せ、ハグすると額にキスした。
「何かあったら、俺に言えよ」
「……うん…」
 何かあったのかと、郁磨は心配しているのだろう。
 兄弟とはいえ、郁磨には結構お見通しでかなわない。
 しばらくぎゅっと佑人を抱きしめたあと、郁磨はラッキーと散歩に出て行った。
 郁磨は人の目を気にするとか、誰かの顔色を伺うとか、一切ない男だ。
 そんなふうに佑人を抱きしめたりキスしたりは、もう子供の頃からずっとで、さすがに日本人の前でそれをやったときは、一瞬周りにひかれたりするが、郁磨は人目もはばからずおかまいなしで、気にするようなこともない。
 大事な弟を抱きしめて何が悪い。堂々と言ってのける。
 佑人はそんな郁磨が羨ましいと思ったことがよくある。
 郁磨だけではない、子供の頃からみっちゃん、かずちゃんで、結婚して子供ができても、互いにゆるぎない信頼を抱いている両親にしてもだ。

 


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