空は遠く55

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 落葉樹はあらかた葉を落とし、枝々を潜り抜けていく風はまだへばりついている枯葉をもぎ取っていく。
 降ってくるかもしれないな。折りたたみ、あったっけ。
 机の中を探って傘を確かめる。
 案の定、五時限の途中から、ぱらぱらと冷たそうな雨が降り始めた。
 六時限の化学の授業が終わると、傘を持ってきた、こなかったと口々に言いながらみんながそれぞれ教室を出て行く。
 期末試験が始まる週明けまであと二日、そのため部活も休みのところが多く、皆が雨の中散っていくのが窓から見える。
「成瀬!」
 自分の靴箱の前で佑人は追いかけてきた啓太を振り返った。
「成瀬、帰るの? マックとか、寄らない?」
 力や東山が傘を忘れたというので、啓太が置き傘がなかったかと、教室のロッカーやらを探しているうちに、佑人はさっさと教室を出てきたのだが。
「悪いけどやめとくよ。そろそろ受験考えなくちゃならないし、家庭教師が来るから、これからつき合えなくなるな」
「え……、あっ、そ、そうか、そうなんだ…」
 途端、啓太の表情が曇る。
 それを見た佑人は、ふっとひとつ息をつくと、コートから財布を取り出し、中から五千円札を抜いて折りたたんで啓太に差し出した。
「鞄届けてくれたお礼もしてなかったし、つき合えなくてごめん」
「え、いや、そんなの、いいって……」
 遠慮する啓太の背後からいきなり手がのびて佑人の差し出した五千円札を取り上げ、逆に佑人に突きつけた。
「てめぇ、バカにすんのもいい加減にしろよ!」
 佑人にきつい視線を向けたのは力だった。
「啓太は金が欲しくてわざわざてめぇんちまで行ったわけじゃねー!」
 突然割り込んできた力の侮蔑に満ちた怒りに、佑人は一瞬凍りついた。
「へえ、違ったんだ?」

 


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