数学は公式が間違っていたり、英語はスペルがでたらめだったりしたが、確かに啓太の一生懸命さが伝わってくるようで、佑人は愕然とした。
ノートの裏いっぱいに高田啓太と書かれた文字は、今にも泣きそうに自分を見ていた啓太の大きな目を思い起こさせた。
啓太の気持ちなど、考えたこともなかった。
東山にしても啓太にしても、佑人の中では力以外のその他大勢、マックに佑人を誘うのも調子よくタカるだけが目的で、鞄を届けたのだって、そのあたりの下心があっただけだろうと。
彼等に気前よくおごっていたのも、ただ単に力と一緒の時間を共有するため、見返りなど期待もしていなかったし、どうせそれだけのやつ等だと。
啓太が、朝や昼に自分に声をかけてきたことを佑人は思い出す。
それも下心とは無縁のもので、本当に佑人のことを心配してのことだったのか。クラスメイトに親切にされるとか、そんなことはもうはるか昔の不確かな記憶でしかない。
だが、いまさら啓太の親切心を知ったからといって、どうしろというんだろう。
「明日、机の中にでも返しとくか」
佑人は口にして、気になっていた啓太のノートの間違いを赤ペンで訂正してから、また鞄にしまった。
期末試験の最終日。
みんな試験が終わって浮かれていた。
ただひとり、面白くなさそうな顔でトボトボと駅に向かったのは啓太だった。
ここのところ、何か面白くない。
佑人と力が喧嘩してから、二人はお互い口も聞かなくなったし、力の不機嫌さは前にも増してひどい。
一緒にいても、面白くない。
今日は美紀が学校まで迎えに来ていて、力はさっさと彼女と消えた。
しかも、東山は中学の友達と会うと言って先に行ってしまった。
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