優等生の成瀬が俺みたいなやつを、本気で相手にしてくれないんだなあとか、思ったけど、返してくれたノート、びっちり赤で修正して、注釈までつけてくれて、やっぱ、成瀬、優しいって。
期末、お陰でいつもよりできた気がするし、礼、言わなきゃとは思うんだけど、成瀬もなんかトリツクシマがないって感じで、声をかけづらいし。
ちぇ……
ブツブツとつい口にしながら、啓太はゲームセンターに直行した。
久々で夢中になって時間を忘れていた。
いい加減帰るかとゲームセンターを出た時には、外はもう暗くなりかけていた。
その日、たまたま近くまで来てるから映画をみないかと郁磨がメールで誘ってきたので、佑人はランチをおごってもらい、郁磨の好きなファンタジー映画を見て、これから研究室に戻るという郁磨とは映画館の前で別れた。
時々、郁磨はそうやって内に篭りがちな弟を気遣ってくれる。嬉しいけれど、自分のふがいなさにやはり佑人は申し訳ないと思う。
本屋に寄ろうと駅ビルに向かった佑人は、細い路地の真ん中で啓太を見かけた。どう見てもガラの悪そうな他校の生徒四人に取り囲まれている。
「金なんか、ゲームで使っちゃったからないって」
そう訴える啓太の頭を横にいた男がパシッと殴る。
咄嗟に身体の方が先に動いていた。
「金なら俺が出すから、そいつを離せよ」
割って入った佑人を、男たちは下卑た笑いで見やる。
「渡しちゃダメだ」
ところが啓太がそう叫んだ。
「余計助長させるだけだからって、力が」
佑人は啓太の言っていることに納得した。
「そうか」
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