空は遠く59

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 差し出した金を巻き上げられる寸前で、佑人が男の手をさっとかわしたので、男がつんのめってひっくり返る。
「……んのヤロー!」
 殴りかかった腕を佑人が反射的にひょいとよけると、他の三人も色めき立った。
 眼前に突きつけられた拳を、今度はその手首を掴んで捻りあげると、男は「うぎゃあっ!!」と叫んで激痛のあまり腰を抜かした。
「…こいつ……!」
 飛び掛ろうとした男を蹴り倒すとその後ろの男らもつられてよろける。
 その隙に、佑人は呆気にとられている啓太の腕を掴んで逃げ出した。一目散に逃げた二人は、スーパーの入り口から駅ビルの中へと駆け込んだ。
 辺りを見回しながら、私鉄の駅へと向かい、改札を通り抜けると、ちょうど急行が停まっていた。二人は最後尾の車両の前まで走ると発車寸前で飛び乗った。
 車内は混んでいて、しかも思い切り走ったため、ひどく暑く感じられた。二人とも緊張しているせいか、言葉がない。
 三つ目の駅で降りると、乗り換えのためにエスカレータで上がる。
「あ、ワリィ、も、俺、平気。次だし」
 ホームに二人並んで立つと、佑人がついてきてくれたことに気づいて、ようやく啓太が口を開いた。
「うん」
「でも、成瀬、すっげ強いのな。びっくり………」
「いや、喧嘩みたいなこと、あんまり知られたくないんで、黙ってて欲しい」
「え……あ、わかった。ほんと、ありがと」
「……いや、俺こそ、ノート気づかないで、ゴメン」
 途端、啓太はカッと頬を赤らめる。
「と、とんでもない。逆に成瀬、いっぱい直してくれたお陰で、俺、期末、赤点逃れたし……」

 


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