駅を出ると冷たい空気が一気に佑人を取り巻いて、ふうと吐いた息が白い。時計屋に続く道は、少し上り坂になっている。
「きゃー、ちょっと、タロー、誰か捕まえてぇ!!」
店の前までやってきた時だ、振り仰ぐと大型犬がこちらに向かって走ってくる。だが、道行く人は大きな犬だからか、思わずよけてしまう。
佑人は傍を通り抜けようとした犬のリードを掴んだ。
「待て!!」
勢いに任せて少し走りながら両手でリードを引っ張り、大きな声で言うと、ようやく犬が足を止めた。
「ヨシ、タロー、いい子だ、座れ」
荒い息をしているタローはそれでも佑人の命令に従って座る。
タローの身体をを撫でて落ち着かせながら坂の上を見ると、飼い主らしき女性が立ち上がろうとしたが、また尻餅をついている。
どうやら足を怪我しているらしい。
「タロー、おいで」
佑人はリュックを背負い直し、女性のところまでタローを連れて行った。
「大丈夫ですか? 足をどうかしました?」
「平気……ったた……っ!」
また立ち上がってみるが、長い髪を優雅にたらした女性は痛みに顔を顰める。
「ったくこのバカ犬! 人の言うことちっとも聞きゃしないんだから!」
タローの方はそんなことを言われてもどこ吹く風と、佑人の傍で甘えたそうな目で女性を見ている。
「歩けますか、肩につかまって下さい」
タローのリードを腕に巻いたまま、佑人は女性に手を貸して立ち上がらせると、女性は佑人の肩に腕をまわしてゆっくり歩き始めた。
「ごめんね、すぐそこの喫茶店まで連れて行ってもらえるかしら」
「わかりました」
右側に女性を支え、左側にタローを従えて佑人は女性の言う店へと向かった。
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