また一人、店にやってきた男が、「あ、はい、俺、ここの者です。預かります」と言って荷物を受け取り、店に入っていくのが見えた。
「……山本?」
まさかと思う。
だが、名残惜しげにドアの向こうから佑人を見送っているタローは、最初からラッキーによく似ている気がして親近感を抱いていた。
大きさも雰囲気も、第一よく考えてみれば、毛の長いシェパードというような雑種が、やたらにいるわけではないだろう。
じゃあ、ラッキーの兄弟? きっと、そうだ。だとすると、やっぱり店に行くわけにもいかないか。
犬を連れて入れるだけでなく、店の人もお客もせっかくいい感じの店だと思ったのにな。
紙袋には、「ワンちゃん猫ちゃんとご一緒に カフェ・リリィ」とプリントされていた。リリィは百合江からつけたのだろう。
「成瀬とか、言わなきゃよかったかな」
例え名乗らなかったとしても、力がいつ現れるかもわからない。
「そっか、タロー、ラッキーの兄弟か」
ラッキーの兄弟がこうして元気に育っていたことは素直に嬉しい。
力があの時の宣言どおり、ちゃんと子犬を大事にしていたことがわかっただけで、ちょっと涙が出そうになった。
『いいか、責任もって飼うんだぞ! 捨てたり、保健所やったりしたら、俺が承知しねぇからな!』
親になんか口出させねぇ、と断言したあの時の力の言葉は今でもはっきり覚えている。
でも、あのお母さんなら、全然平気だったろう。何しろ、ペットと一緒のカフェなんか開くくらいだ。
それに、バカ息子とかバカ犬とか言うその言葉には愛情が感じられる。力との親子関係もおしてしるべしだ。
佑人は二人の親子関係は疑うべくもないと確信していた。
思いがけず力の日常を垣間見たことが少しばかり嬉しく、だが、もう近づくことはできないということに、心が軋む思いがするのだった。
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