力が珍しくクラスの女子と携帯で写真を撮り合って戯れている。
佑人は気にしないようにしようと思いながら、力に媚びているような女子の声とかが癇に障り、そんな自分にまた苛立ちを覚えていた。
もうずっと力とは口を聞かない日が続いている。
啓太は何やら佑人に声をかけたそうな顔で見るのだが、佑人もそれをはぐらかすし、啓太も力のようすを窺ったりして、啓太を家の最寄り駅まで送っていった日以来、こちらも声をかけてはこない。
もともと何か用がない限り佑人に声をかける生徒も少ないため、教室内では尚更目立たずひっそりと座っていることが多くなった。
静かな毎日を過ごせそうだ、と思いきや、放課後、教室を出たところで馴れ馴れしく近づいてきたのは坂本だった。
「な、な、成瀬、どこの塾行ってるんだ?」
思わず眉根をひそめて、佑人は肩に腕をまわしてくる坂本を見上げる。
「……どこも」
「嘘だろ? じゃ、カテキョ?」
「そんなもんだが、お前には関係ないだろ」
早く坂本を振り切りたくて、思い切り無愛想な返答をする。
「どっかの派遣? それとも個人的に?」
「個人的に」
「へえ? 成瀬のカテキョだったら、かなり優秀なやつだよな」
坂本の腕を軽くはずすと、たったか歩く佑人に坂本は尚も追いすがる。
「なあ、俺にそのカテキョ、紹介してくんないかな?」
「……お前、T大生の家庭教師、いるんじゃなかったか?」
「ああ、あのお姉さまねぇ、ここだけの話……」
坂本はふいに佑人の耳元に唇を寄せた。
「ベッドの相手としては合格なんだけどさ、何かちょい、物足りないっつーか」
ぼそっと呟いた言葉に、佑人はかあっと頬を赤らめる。
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