空は遠く71

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「何なら、交換してみるっての、どうよ? この際、お前もチェリーちゃん卒業できる……」
「ふざけるな」
「あれ、あたり?」
 下世話な言葉に佑人は話にならないと足を速め、玄関でスニーカーに履きかえて坂本を振り切った。つもりだったのだが、「ちょ、まったぁ!」と坂本はしつこく佑人を追いかけてきた。
「いや、ほんと、マジな話。二年もあと少しだし、俺、ここんとこ伸び悩んでてさ、打開策を考えないと」
「有能な家庭教師なら、ちょっと探せばいくらでもいるだろう」
「俺さ、こう見えて結構センシティブな人でさ、やっぱ、誰でもってわけじゃなくて。同じくセンシティブな成瀬のカテキョなら、俺もいけるかもって」
「センシティブ? 坂本が?」
 到底センシティブとはかけ離れた厚顔無恥さすら漂う顔で、ニコニコと坂本は佑人を見下ろしている。
「そう、俺が。だからぜひ紹介して?」
 何やら胡散臭い気もしたが、佑人はふうと一息ついた。
「わかった。紹介くらいはするが、OKしてくれるとは限らないからな。じゃ…」
 駅まで一緒に歩いてきて、これで話はついたと佑人は改札口を通り抜けた。
「あっと、俺、今日、親戚んちに行くんだ、久我山の。成瀬、久我山だったよな?」
 いつの間にか同じホームに上がってきて、横に立っている坂本を佑人は怪訝そうに見上げる。
 少し長めのさらさらの髪、一学期までバスケットをやっていたというだけあって、長身で一見すんなりとして見えるが、学生服の下が鍛えられた体躯なのは、一緒の体育の時間に見せつけられている。
 力ほど派手ではなくても、坂本が女子にはそれなりに人気があるらしいという噂は佑人の耳にも届いていた。しかも学校では優等生面をしているが、外では遊んでいるらしいことは、力たちと一緒の時に知った。
 どうやらうまく世の中渡っている、らしい。佑人からしてみれば羨ましい人間の部類に入る。

 


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