空は遠く72

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「でさ、成瀬のカテキョ、どんな?」
 急行はそこそこ混んでいた。ドアの傍に並んで立つと、坂本は話をしたくないという態度を全面に表したつもりの佑人におかまいなしに話しかけてくる。
「どんなって、男だ。兄の後輩で」
「じゃ、T大生? 学部は?」
「法学部。留学資金ためてるらしい」
 どうして兄の郁磨がT大だということまで知ってるんだ、と思いながらも、佑人は手短に答える。
「マジ、頼むよ、都合あわせるから」
「とりあえず、聞いてみる」
「やりやすい?」
「柳沢さんは相手に合わせたやり方を考えてくれるから、俺のやり方はお前のやり方にはならないだろう」
「成瀬のやり方って?」
「オールイングリッシュ」
「は?」
 間抜けな表情で坂本は佑人を見下ろした。
「英語をマスターしたいからという柳沢さんの要望で、ずっと英語を使っている」
「それ! 俺も混ざりたい! いや、週イチでいいから、二人で一緒にお勉強ってのどう?」
「遠慮する」
 即答されて、坂本は佑人の前に回りこむ。
「ちょ、考えてくれてもいんじゃない? お互いの不得意な教科をフォロウし合うってやつ? いいじゃん、T大目指すもの同士」
「T大受けるとは言っていない」
「ああ? お前がT大行かなくて誰が行くんだよ」
 気がつくと既に成瀬家の長い塀の続く通りへとやってきていた。
「親戚ってこっち?」
「親戚? あ、ああ、そう、こっち…からも行ける」
 急に話を変えられた坂本は躊躇いをみせた。
「……そういえば……、まだ、礼を言ってなかったっけ」

 


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