空は遠く74

back  next  top  Novels


「へいへい、タロー、降りろって」
 恐持てに睨みをきかされて、力は仕方なさそうにタローに向かって床を指差すと、のそのそと身体を起こしたタローは床に降りて今度は座った。
 力がテーブルの上のバスケットの中からビスケットをひとつ取るなり、すかさず練が言った。
「二百円」
「ちぇ、かてぇこというなよぉ」
「売り物だ」
「わぁかったよ」
 ものぐさそうに、力は財布から二百円を取り出すとテーブルに置いてから、ビスケットを袋から出して期待に満ちた目を向けているタローの前に置いた。
「待て」
 タローはもぞもぞと待ち切れなさそうに、それでも許しが出るまで力をじっと見つめている。
「食ってよし」
 途端、あっという間にタローはビスケットを食べてしまった。
「よし、タロー、伏せ」
 タローは力の命令に素直に従う。
「力の命令なら絶対なんっすよねぇ、俺なんか何言ってもタロー動きゃしねぇのに」
「マサにゃ、威厳ってもんがねぇんだよ、ひょろ長いばっかで」
 力は鼻で笑う。
「それを言うなら、こないだ来たヤツ? 俺よか、弱っちそうなのに、タローのやつ、すっかり懐いちまってたって、百合江さんが。ああ、ほら、ちょうど俺が店に入る時出てったヤツ」
 モップを使いながら、マサは心外だとばかり文句を言った。
「成瀬くんだろ? 威厳があったんだよ。身体の大きさじゃねぇ」
 すっかり佑人フリークになった練が口を挟む。
 力がその話を聞いたのは、つい昨日のことだった。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ