空は遠く75

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「成瀬くんじゃねぇか?」
 力が教室で女子と戯れながらドサクサ紛れに携帯で撮った佑人の写真を見せられてそう言った練を、力は睨みつけた。
「てめ…、何で知ってんだよ」
 練はタローの散歩中に百合江が足をくじいて、佑人がタローと一緒に店まで連れてきてくれたことや、よく店に来る外人に流暢な英語で対応してくれたことなどを、感心しきった表情で力に話して聞かせた。
「しかもタローがしっかり成瀬くんの言うことを素直に聞いてるんだ」
 恐持ての表情が緩みっぱなしなのを、力はフンと笑う。
「なーにが、成瀬クン、だ。関東周辺のゾクの総元締めがよ」
「元だ。ヘッドといえ! マル暴みてぇなことをいうな」
 ジロリと力を睨みつけながら、
「第一、もうオツトメはすませたし、今は健全に働いて納税している。まあ、何もかも百合江さんのおかげだが」
「フン、練、組とか一切関係なかったし、百合江あんたのこと、気に入ってんだよ。あいつ、ヤクザでっきれーだから」
「ダンナが元マル暴の警察幹部だったからだろ?」
「ってより、銀座の店、一件潰されたこと、根に持ってっからな。組関係締め出そうとして。あいつ、理不尽なこと嫌れぇだから、潰されて黙ってるタマじゃないし」
 力は笑って母親のことを断言的に言い切った。
「フン、弁護士と組んで徹底的に店潰した組とやりあって勝っちまうってんだから、ホント、いい度胸してるぜ」
「ちぇ、百合江のことなんかどうでもいいんだ。それよか、とにかく頼むぜ」
「念を押すまでもねぇ。高校生のガキどもなんか。まあ、後ろにいる奴らがちと気になるが」
「必要以上なことはやってくれなくていい。あんたらに迷惑かけるつもりはねぇし」
「うまくやれってんだろ? お前にいわれるまでもねぇよ。あいつらを下手なことにさせるつもりはねぇ」
 練はカップを拭きながら、にやりと笑う。
 雨はどうやらなかなかやみそうにない。
「あー、明日は、せっかくのイブだってのに、これじゃ、台無しっすね」
 モップを片付けてきたマサが窓の外を見ながら言った。

 


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