空は遠く76

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「どーせ、おめぇにはイブも何も関係ねーだろ?」
「…っせーよ、練さん! あんただって、人に言えるかって」
「俺は仕事だ。とっとと裏行って、真野さん手伝って来い。ケーキの数、半端じゃねーんだ」
「わーかったよ、ったく、人づかい荒いんだからよ」
 マサは口を尖らせながら、厨房へと引っ込んだ。
「百合江がまた、真野さんに無理難題言ってんじゃねーのか?」
 フン、と鼻で笑いながら、力はポケットで鳴り始めた携帯を物臭そうに取り出した。
「おう、何だよ」
 聞こえてきたのは気にしていた相手からではなく、美紀の甲高い声に力は眉をひそめる。
『ねぇ、明日のことなんだけど、実はぁ、あたし、Tホテルのディナー予約してあるんだ』
「ディナー? うっぜーな。んなもん学ランで行けるかよ」
『ええー、だってぇ……学ランじゃなくても……』
「用がなきゃ、切るぞ」
『あ、待って! ゴメン、じゃ、明日……』
「おう」
 そっけなく切った力を見て、練が舌打ちする。
「クリスマスなんて女にしてみりゃ、重大イベントだろうが。ディナーくらい、つき合ってやりゃいいだろ?」
「っぜぇんだよ。だったらお前行けよ」
「ったくお前、釣った魚にエサやらねぇ、マンマだな。可愛い子だって話じゃねぇか、マサがお前ら見かけたって羨ましがってたぜ」
「俺は初めっから、彼氏ほしきゃ他あたれっつってんだよ! イベントまでつき合う義理はねぇ。好きでもねぇのに、んなウソくせぇことやれっかよ」
「ったく、てめぇはそういうやつだよ」
 練は呆れ顔を向ける。

 


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