空は遠く80

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 ほんと、小心者だから仕方ないよな、俺は。
 学生時代ラグビーをやっていたという大柄な加藤は、昨今の体格のいい高校二年生の男子にも、お陰で教師としてそれなりの威厳をもって接していたし、比較的軽めの口調は生徒たちから割りと好かれる部類に入る。
 佑人も加藤のことは今までの教員とは違うような気がしていたが、だからといって、教員に対して警戒感を解いたわけではない。
 ホームルームが終わると、終業式のために全校生徒が教室を出て、講堂へと向かった。
 終業式さえ済めばあとは冬休みが待っているとあって、ぞろぞろと歩く生徒たちはわいわいと、「廊下は静かに」というどこぞのクラスの委員長らしき声も何の効果もない。
 そんな中、佑人は前を歩く啓太が今にも泣きそうな顔で力に何か言っているのに気づいた。
 東山、大丈夫って、風邪、じゃないのか?
 急激に佑人の心に不安が押し寄せる。
 一体、どうしたんだ? 何か………あった?
 啓太に聞いてみようか、いや……今更、彼らのことに俺が首を突っ込む理由もないか……
 校長の話も風紀委員の話も佑人の耳を通り抜け、講堂での一時間ほどはいつの間にか過ぎ、生徒が動き出してようやく、終業式が終わったことに気づいた。
 何かしっくりこないまま、佑人は校門を出て行く生徒の群れに流されるように歩いていた。
「成瀬!」
 いきなり肩に腕をまわされて、佑人ははっと顔を上げた。
「柳沢さんに、聞いてくれた?」
 坂本は昨日に増して親しげに佑人の顔を覗き込む。
「あ、ああ、夕べ電話してみたんだが留守電で、今、ニューヨークにいるらしくて、週明けには戻ってくるみたいだけど」
「そっか、悪いな、じゃあ、戻った頃、また聞いてみてくれよ」

 


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