「ああ、平気平気。俺んち、親、こないだっからクリスマスクルーズってやつで今頃海の上。だから年末年始ずっと俺一人だし。よし、んじゃ帰ってピザでも取るか。ピザ、食えるよな? ワインとかビールは冷蔵庫にあったし」
「え……ちょ、坂本」
「あとは、せっかくイブだからケーキとかローストチキンとか買ってこう」
「お、お前こそ、彼女と予定あるんじゃ………」
佑人は慌てて何とか断りの理由を探す。
「受験終わるまで彼女は断ってるし」
「だって、家庭教師の……」
「あの人とはお互いプレイ楽しむだけってやつ? 彼女って感じじゃないし。じゃ、駅ビルでいろいろ仕入れていこうぜ」
駅に近づくと、坂本は佑人の腕を取って、見えてきた駅ビルのスーパーへとたったか向かう。
「あ、ワリィ、ちょっち待ってて? 軍資金」
銀行の前まで来て、坂本はキャッシュサービスに入っていく。
佑人は坂本のペースに乗せられてそこまできたものの、まだどうしたものかと迷いながらATMの前にぼんやりたたずんでいた。
「よう」
だから、前からやってきた数人の学生たちが目の前で足を止めるまで気づかなかった。
「こないだは世話になったな」
他校の生徒だとはわかったが、その顔をすぐに思い出せなかった。ただ、関わらない方がいい相手だとは瞬時に気づき、身構える。
ところが後ろから近づいてきた男たちが両側から佑人の腕を捕らえると、たまたま手に持っていたリュックが落ちた。
「おとなしそうな顔して、こないだは軽ぅくやってくれちゃったからな」
あっと、いつぞや啓太を脅していた連中だと佑人は思い当たった。
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