頭の上で低く唸る声。
……山本……?!
男たちに囲まれてもさほど動じなかった佑人は息が止まりそうになる。
力は佑人を抱きすくめるようにエアコンの室外機の後ろに身を沈めた。
覚えのある学ランの匂いに力の腕の下で佑人の心臓は一気に跳ね上がり、ドクドクと音を立て始める。その音が力に伝わるのを恐れて、佑人は身じろぎするが、力はかえってぐいと抱き寄せた。
すぐ横の道をバタバタと男たちの足音が通り抜けていく。
冗談じゃない、こんなの、頭がおかしくなる……!
「来い」
息を呑む音もはばかられて、ひどく長く感じられた緊張は、またふいに破られる。
力はしっかと佑人の手を掴んだまま路地に出て走る。
滅多に揺らがないはずの佑人の頭の中は混乱し、足がもつれる。全速力で走ったところで、これほど胸が潰れそうになろうとは思えない。
「被れ」
そこに停めてあった大型バイクに括りつけられたヘルメットのひとつを佑人に渡すと、もうひとつのヘルメットを無造作に被り、力はバイクに跨った。
「速く乗れ!」
もたついている佑人を促し、力はエンジンをかける。
必要最低限の言葉で命令されるまま、佑人が後ろに跨ると、力は佑人の手を自分の腰に回させた。
「しっかり捕まってねぇと振り落とすぞ!」
バイクは大きくエンジン音を上げて走り出した。
佑人の頭の中は何も考える余裕はなかった。
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