車の間を縫うように大通りを抜け、バイクは容赦なく吹きすさぶ北風の中、街を疾走する。
力の背中にしっかとしがみついていた佑人は、バイクがエンジンを切った時、ようやくそこが覚えのある喫茶店の前だと気づいた。
「入れ」
尚も命令口調の力に、佑人は何も言い返すこともできず、ヘルメットを取って力のあとに続いてドアをくぐった。
「いらっしゃい」
出迎えてくれたのは、恐持ての練の顔と早速駆け寄ってきたタローだった。
店内には明るいクリスマスソングが控えめに流れている。
まるでさっきまでの出来事が嘘のように和やかな空間の中で、佑人はポツネンと突っ立っていた。
「くっそ、半端じゃねく凍っちまうぞ」
力はソファにどっかと座り込み、ヘルメットを横に放った。
「この寒空を学ランでバイクなんざ、バカとしか思えねぇ」
「ジャケットなんか着てたらウザくて走れねぇんだよ」
「成瀬くんも座れよ」
用意していたかのように、練はすぐに温かそうな液体が入ったカップを二つトレーに乗せてカウンターから出てくると、佑人をソファに促した。
まだ浮いているみたいにおぼつかない足を動かして、佑人は力の向かいのソファに座る。
タローはすぐさま力の横に飛び乗ったが、すかさず「タローを降ろせ」と練が注意する。
「降りろ、タロー、伏せ」
床を指差されて、タローはクウンと甘えた声で力を見ながら、その足元に伏せた。
練が用意したカフェオレをガブガブと飲み干した力やその足元のタローを、佑人は呆然と見ているだけで、言葉も出てこない。
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