それがどうして力が出てきたのか考えてみると、きっと啓太も同じような目にあいかけたので、自分のことも力に頼んでくれたに違いない。
気がかりなのは東山のことだ。
啓太が泣きそうに心配していたのは、風邪で休んだわけではないのかもしれない。もしかすると、啓太と一緒にいたか何かでとばっちりを受けたのではないかと。
だったら……俺のせいだ…………
「成瀬くんは、ケーキ、どうかな?」
「えっ、いえ、俺はそろそろもう……」
いずれにせよ、喧嘩というより、「失せろ」とまで言わせた相手に助けられるなんて、愚の骨頂だ。啓太に頼まれたから仕方なく自分を助ける羽目になって、力にしてもいい加減目障りに違いないのだ。
第一、力とテーブルを挟んでいても互いに何も言葉がない。
気詰まり極まりないこの状況から、佑人は早く抜け出したくて立ち上がりかけた。
「まあまあ、そう、慌てなくても、こいつが食い終わるまで店、開けられないし」
練の言葉に、力と自分以外に客がいないことに佑人はようやく気づいた。
「え……すみません、だったら尚更、お礼には改めて伺いますから……」
「いいから座ってろ!」
力が怒鳴りつけた。
「腹ごしらえしねぇと、お前、送ってくにも力がでねぇんだよ」
それを聞いて、佑人は頬を赤らめる。
「わざわざお前に送ってもらわなくても、一人で帰れる。子供じゃあるまいし!」
すると力はちっと舌打ちし、ジロリと佑人を睨みつける。
「てめぇ、さっき、襲われかけたの忘れたんじゃねぇよな?」
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