「高田に頼まれたのか知らないが、俺はお前に助けてくれなんて頼んだ覚えはない。自分のことは自分で決着をつける」
力はフン、と思い切りバカにしたような笑いを浮かべた。
「自分の腕にえらく自信があるみてぇだがな、ことはてめぇ一人じゃ済まなくなってんだよ、とっくに」
「東山のことか? やっぱり風邪なんかじゃないんだな? 俺のせいでやつらにやられたのなら……」
「てめぇのせい? 笑わせるな。てめぇだけで何でもできると思ってんじゃねぇ!」
喧々囂々のようすを呈してきた二人を見て、練が口を開きかけた時、ドアが開いた。
「すっげぇ、寒いの何のって……おう、成瀬、お前の鞄」
息せき切って入ってきたのは坂本だった。
その手に掲げられた鞄を見て、佑人は男たちに囲まれた時、リュックを落としたことを思い出した。
「あ……りがとう、悪い……」
受け取りながら、ふと坂本がどうしてここにいるのかという疑問にまた突き当たる。
「練さん、俺にもコーヒーお願い」
坂本は遠慮なく佑人の横に座り、力に向き直った。
「おい、お前、どうすんだよ、美紀ちゃん、泣いてるの宥めすかして送ってくのに一苦労だったんだぞ!」
「だったら、お前が慰めてやれよ」
力はかったるそうに返事をする。
「ざけんなよ!? 今晩、お前んとこ、行く予定だったんだろ? とっとと連絡してやれよ」
「うぜぇんだよ、あの女、言い寄ってきたからちょっとつき合ってやったんだ。それを誕生日がどうのクリスマスがどうの、やってられっかよ」
別れてしまえばいいとも思ったことがある佑人だが、それはあまりに傲慢な暴言だ。
力はこういう男なのだ。それを言われた相手がどんなに傷つくかとかなんて、考えもしないのだ。
back next top Novels