空は遠く90

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「てめぇ、言うにことかいてつき合ってやっただと? 何様のつもりだ! 少しは女心も思いやったらどうだ?」
 佑人と同じように考えたのだろう、坂本は声を上げた。
「知るか。だからお前が思いやってやれよ。俺は食ったらこいつを送っていかなきゃならねぇんだ」
「ふざけるな! 俺を理由にするな! お前に送ってもらう必要なんかないって言ったはずだ。いくらなんでも彼女に対して誠意がなさ過ぎるんじゃないのか?」
 自分を引き合いに出された佑人は、かっとなって立ち上がる。
「それこそお前に言われる筋合いはねぇよ。誠意だと? フン、見せる相手は俺が決める。カタチだけの誠意なんざクソクラエだ」
 力の言葉は佑人の胸をついた。
 あまりにも正論で、いや、力は嘘を言わないのだ。まやかしの誠意などゴメンだと思っていたのは自分だったではないか。
 佑人は唇を噛み、何に対してかわからないが、イラ立ちを抑えきれず、たったかレジへ行った。
「練さん、すみません、コート下さい。今夜の分、俺、支払いますから」
 途端、また力の罵声が佑人に飛んだ。
「てめぇ、何でも金で解決しようとすんなって言ったはずだ! 練、俺が頼んだんだ、俺が払う」
「これは店に迷惑をかけたお詫びと、お前らに貴重な時間を使わせてしまったことへの礼だ。金で解決しようなんて思っていない。今日の仮りはきっちり返す!」
 佑人も言い返す。
「その言葉、忘れんじゃねーぞ」
 まさしく売り言葉に買い言葉状態で二人はしばし睨み合った。
「ようし、そこまでだ」
 そこへ練が割って入り、佑人は知らず強張っていた緊張を解いた。
「見かけによらず、成瀬くんも負けん気だな、力みたいなクソガキ相手に」

 


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