練は苦笑を浮かべながら、パスタやローストチキンを盛り付けた皿をカウンターからテーブルへと運ぶ。
「まあ、お前が女にフられようが、俺は知ったことじゃない。それより、成瀬、さっきの続きしようぜ」
もう力に何を言っても無駄だというように坂本は首を振り、席を立って突っ立っている佑人の肩に腕をまわした。
「え? 続き?」
急に坂本に振られて、佑人は振り返る。
「俺んちでクリスマスやるってやつ? 行こうぜ。力、成瀬は俺が送っていくから……」
ところが今度は力は立ち上がって坂本を怒鳴りつけた。
「ざけんじゃねぇ! 誰がお前んちでクリスマスだ?!」
「俺と成瀬に決まってるだろ」
「うちのクリスマススペシャル、食わないで行こうってんじゃねぇよな? しかもうちの天才パティシエが精魂こめたケーキの味見もしねぇで出て行こうたぁ、いい度胸じゃねぇか!」
「何を芝居がかってんだよ、力」
坂本は呆れた顔で言い返す。
「るせえ!! とっとと座れってんだ!」
これまでになく凄みのある怒声に、それまで力たちの言い争いにも動じないで寝そべっていたタローが、すくっと顔を上げた。
そのやり取りの間にも、練はテーブルにところ狭しと料理を並べている。
「まあま、二人とも、とりあえず座れよ」
練にも促されて、佑人も坂本も座りなおす。
「今夜は力のおごりってことでいいんじゃねぇの? 力も、そんだけ言うんなら、ブッシュドノエル、きっちり食っていけよな?」
言われて力はぐっと言葉に詰まる。
「……んなもん、……食わないでか! それよか、ビールとかも出せよ」
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