空は遠く92

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「お前、うちの店を潰す気か? 学ラン着た二十歳未満に酒をほいほい飲ませられると思うのか?」
 窘められて力はフン、と鼻で笑う。
「とりあえず、七時までなら貸切にしといてやるよ。大体、お前ら、さっきから図体のでけぇやつらが狭い店ん中で喧嘩腰で声を張り上げてりゃ、客も寄りつかねぇってんだよ」
 それを聞くと、佑人はつい我を忘れていた自分が情けなく、いたたまれない気持ちになった。
「すみません、練さん、ご迷惑おかけして」
「ああ、成瀬くんはいいのいいの」
 練は超不機嫌な顔を改めようともしない力や、腕組みをして不本意だと顔に書いてあるような坂本にはおかまいなく、パスタやらサラダやらを取り分けて三人の前に置いた。
「どうぞ、遠慮なく食べな。いや、何せ、百合江さん、ベタボメ、メタ惚れだから、成瀬くんには」
 恐持てにしては目いっぱいな笑みを向けられ、佑人は思わずパスタがのどにつかえそうになる。
「おお、意外だな、成瀬、百合江ちゃんといつの間にそういうことに? お前実はマダムキラーだったん? わかるなー、お前、可愛がられそうだからなー」
 食べ物を前にすればさっきのいがみ合いも何のそので、パスタを掻きこんでいた坂本がその手を止めた。
「くだらねーことぬかすんじゃねぇ! ったく、あのババア、いい年こいて高校生なんかに色目使ってんじゃねーぞ!」
 反論しようとした佑人の言葉を遮って、力が喚き散らす。
「お前、仮にも自分の母親をそういう言い方ないだろーが。成瀬、けど、百合江ちゃんとどうこうってことは、このバカでかいガキにお父ちゃんて呼ばせることになるんだぜ?」
 思わず佑人は力を凝視してしまった。
「な、きさま、本気じゃねぇだろうな?」
 さっきまで凄んでいた力が、急に小さな子供のような顔で慌てている。それがおかしくて佑人は苦笑する。

 


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