空は遠く93

back  next  top  Novels


「それこそ冗談じゃない。俺はこんなヤツにパパ呼ばわりされたかない」
 途端、また力の目に凄みが舞い戻る。
「フン、言ってくれるじゃねーか」
 さすがに高校生男子三人ともなれば、しかも図体の大きな力と坂本の食欲といえば半端ではなく、出されていた料理も次から次へと平らげていく。
「これだけ皿をきれいにしてくれれば、作り甲斐もあるってもんだ」
 見事な食べっぷりに満足した顔で練が皿を片づけ始めた頃、ドアが開いて「うーっす」とマサが入ってきた。
「練、何で準備中? と、あれ、力?」
「見ての通り、七時までこいつら貸切。準備頼む」
 トレーにブッシュドノエルとウエッジウッドの紅茶セットやらを載せてカウンターから出てきた練が言った。
「ヘーイ」
 マサはもう一度三人を見回してから奥の厨房に消えた。
「約束どおり、しっかり食べろよ」
 ブッシュドノエルを三等分して皿に取り分け、ターコイズが美しいカップに芳しい紅茶を注ぐと、練は力に念を押した。
「おい、俺のが大きくねぇか?」
「往生際が悪いぞ、力」
 フォークでつつきながら力がぶつくさ文句を言うと、向かいの坂本が笑いながらからかう。
「美味しい……」
 一口食べて佑人が呟いた。
「だろう? うちのパティシエ渾身の作だ」
 練は佑人の傍らで自慢げにうなずく。
 一方、それでは味も何もわからないだろうガツガツと、力はケーキをあっという間に平らげ、紅茶をガブリと飲んだ。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ